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あ~、怖かった。

昨日は、珍しくお日様が出ていて一日良い天気であったが、やはり寒かった。朝方の雪のあと、夜までずっと雨が降っていた月曜にうんざりしていたので、やはり太陽が出ているというのはありがたい。

午後は、行ったことのない郊外の町に出かけるという用事があった。郊外とはいえメトロで行くことの出来る郊外なので緊張度(?)は低いのだが、路線の端っこの方まで行くというのは何となく”各駅停車の小さな旅気分”(笑)で、ちょっとしたドキドキ感が結構楽しかったりする。

パリは小さいとはいえ、何年住んでも乗ったことのない路線や、降りたことのない駅というのがあるものだ。旅行で来れば、単なる好奇心だけで用も無い路線に乗る時間”もないし、そうかといって住んでみても、”行ってみたきゃいつでも行けるさ”感覚により、わざわざ探検しようなどと思うこともめったにない。昨日は、セーヌ川を越えるためにメトロがチョろっと地上に出たのが何とも嬉しく、一人怪しく車内をキョロついていた私であった。

夕方家に着き、今日はメトロに乗ってばっかりで全然歩いてないな~とふと思い、日が暮れる前に近所を徘徊しようと家を出て踊り場にいると、ちょうどエレベーターが上がってきて人が出てくるところであった。出てきたおっさんはどう考えてもこの階の住民ではなく、薄汚い作業着を着ている。私は、そのままエレベーターに乗って降りようとしたのだが、”出かけるんですか?”と非常に歯切れが悪く、なおかつ変なアクセントのあるフランス語で私に尋ねてくる。怪しいな~と思いながら、”そうですが”と答えると、”このアパート全ての家の台所のxxを調べに来ています。義務ですから、すぐにお宅の台所を見せて下さい”とえらそうに言うではないか。

とにかく、このおっさんはどうも歯が足りないのか何なのか発音が悪く、言っていることがよくわからない。台所のxxというのが、この会話の中の重要な単語なのだが、そこが何度繰り返して聞いてもわからない。暖炉がある家に”煙突掃除に来ました”という理由で急に訪問してくるのは良くあるので、”暖炉”という単語を聞いた途端に”あ~、家は暖炉ないです”で断れば済むのだが、今回躊躇してしまったのは、”台所のxx”という理由だったからだ。

というのも、向かいの家で水漏れがあったらしく月曜から工事の人が出入りしていて、つい、”もしかしたら、水漏れを機会に全戸を調べるなんてことになったのか?”と思ってしまったのだ。そんな訳で初めは、動揺してしまって”午後出かけてたから、もしかして私だけが知らないうちに、そういうことになってたのかもしれないな~”、”でも、とにかくこのおっさんが何言ってるのかも良くわかんないのに家に入れるわけにもいかないし~”、”あっ、そういえば今朝大洗濯したから、台所のすぐ脇は洗濯物だらけで通れないし、部屋もめちゃめちゃだ”などというような色々な思いが一瞬のうちにグルグルと廻りだした。

”え~、でもそんな話聞いてませんけど”と”私は大家じゃないので大家に聞いてみないと”という同じ文章を何度か繰り返して時間稼ぎをしながら良く考えてみると、段々冷静になってきた。改めておっさんの姿を見るといくら作業服を着てるからといっても、胸元に社名が書いてあるわけでもなく、とにかく汚らしい。それにほのかに酒臭いような気もする。どう考えてもやっぱりおかしいなという結論にたどり着いたのだが、とにかく家の外に出てしまっている以上、”どうこのおっさんをまくか”というのが大きな問題になってきた。

変に質問に答えてしまった以上、”フランス語がわかりません”とか”この家に住んでいるものではありません”という言い訳は手遅れで、いまさらそんなことを言ったら逆に神経を逆なでしそうだ。そうこうしながら、このおっさんは”時間はそんなにかかんないんだから、早くしてよ”と命令口調になってきた。益々早くどっかに行って貰わなくてはヤバいと思い、本当はこのおっさんの前でドアを開けるのは嫌だったのだが、”家から夫と大家に電話しますから。その間、あなたは他の家を廻ってください。時間がもったいないでしょうから。”と丁重に提案してみた。おっさんはカモを逃したという表情でブツブツ言いながら仕方なく向かいの家々をノックしていた。

その間に急いで家に入り、鍵をしっかり全部閉め、おっさんが下の階に下りていくのをそーっとドア越しに聞いていた。家のお向かいさんは皆不在だったのだが、下の階には老夫婦が住んでおり、大抵家にいるようなので、何とか、このおばあちゃんがどう答えるのかを聞いてみようと思ったのだ。案の定、さっさと断り追い払っていた。”やっぱりインチキだったか。”とホッとしつつ、念のため夫の携帯にも電話をしてみたが留守電になっており、メッセージを残そうかどうしようかと思っていると、おっさんが、また階段を登り家をノックするではないか!最初から家にいた時にノックされていれば絶対に応対しなかったのに、出かけようと外の踊り場に出てしまっていたから、いくらおっさんは多少酒に酔っていたとしても私が家に隠れているのは覚えていたらしく、執拗に何回もノックされてたが答えなかった。

折角ちょっと冷静になったのに、また戻ってきてノックされたのにすっかり驚き動揺を隠せず、慌てて最近親しくしてもらっている同じアパートに済んでいる日本人の奥さんに電話をしてみた。すると”あ~、何かちょうど隣のおばあちゃん家に来てるみたい。断ってる、断ってる。”と言うではないか。”おっさん、そのまま下に下りていってもう上がってこないでもらいたいな~”と思いながら、煙突掃除も良く来るし、特に自分ひとりの時に突然ノックしてくる人には絶対応対しないという話を聞いて、本当に気をつけなくてはと思ったのだった。

一応このヘボアパートも外のデジコードの後にインターホンで中扉を開けなくては建物内には入れないはずなので、誰かが開けてやってしまったか、おっさんが住民の後にくっついてサッと入って来たのかもしれないけど、とにかく用心するにこしたことはない。空き巣の下見や単なる強盗かもしれないではないか。何だか私も久しぶりにブルッとする様な緊張感を味わいながら、仕事を辞めてノンビリした生活を送ってると、こういう”とっさの判断”を強いられるような時の機敏な対応という能力が随分劣ってきたな~と実感したのであった。

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