« あ~、怖かった。 | トップページ | 定食。 »

ラボにて。

またしても写真がない。どうしてもカメラを忘れてしまうのだ。

日にちは別にいつとは決まっていなかったのだが、”なるべく早いうちに”というアバウトな感じで血液検査をする必要があった。完全分業制のこの国では、一箇所で全て済むということは、ほとんどなく、何か検査をする必要がある場合は大抵医者が書いてくれる”何を検査するのか”という紙を持って、街中にある自分で適当に探したラボ(検査所とでも言うのか?)へ行き検査をしてもらうことになる。

私は別にラボへのこだわりがあるわけではなく、以前、適当に自宅から近いところに行ってみたところ特に不具合もないので、それからずっと同じところへ行っている。後から気がついたのだが、実はこのラボは幼児の検査を非常に得意としているらしく、普通の検査室のほかにちびっ子ルームみたいなおもちゃ満載で子供の気をそらしつつ採血や採尿などをするという特別な部屋も用意されていて、ひっきりなしにベビーカーで乗り込んでくる父母が後を絶たない。

今日私がしなくてはいけなかった検査は、糖分の分解能力を調べるというようなものだったのだが、当日何も食べない状態のまま、最初に採血、その後甘いジュース的なものをのみ2時間後に再度採血という流れというのをざっと先生から聞いていた。この2時間というのが、ラボに待機していなくてはならないのか、一旦家に帰る事が出来るのかがわからず、もしラボに2時間もボーっとしていなくてはならないのであれば、非常に嫌だなと思いながらつい先延ばしにしていたのであった。

この国に来てから、自分の身をストレスから守るために”常にありとあらゆる不幸な状態に遭遇することを想定して行動する”ということに敏感になっている私は、今回も最悪ラボに2時間缶詰ということを想定し、先日ブックオフで購入したのだが、この日のために読まずに我慢していたという”猿岩石のヒッチハイク日記(上)と(下)”(今頃!)の2冊を鞄に潜ませた。2時間は絶対必要となる時間で、それに受付してもらうまでの待ち時間、採血の順番待ちなどを考えると、3時間を見た方が良いような気がする。ということは、食事もとれないのだし、朝早めに起きて行き、昼には終了して戻ってこれる方が良いではないか。頭ではわかっていたのだが、最近またダラけた生活をしており、なかなか起きれず、気がついたら家を出たのは10時半であった。

ラボまでは10分もかからないのだが、今日も中を見ると老人にちびっ子にと座る椅子も空いていないほどの混雑ぶりだ。大体8時半から開いているのだからもっと早く来ない私が悪いのだと思いながらも、”もしかしたら採血したら2時間後に又来て下さい”と言ってもらえるかもと期待していたのだが、やはりダメだった。理由は”甘いジュースを飲んだ後に気分が悪くなったりする可能性があるので万が一のため、ここに残ってもらいたい”という、まぁ納得のいくような、いかないような理由であった。

採血のほか、先生からは聞かされていなかった採尿もあり、水一滴も飲んでいないのに大丈夫なのか?と心配したが、人間と言うのはトイレを見ると催すように脳にインプットされているらしい。そして残念なことに、この尿をすぐに調べたところ”糖が検出されているので、すぐには甘いジュースを飲ませられない。少し待て!”と言われてしまった。2時間かかるというだけでも不愉快なのに、結局30分ほどさらに待たされてから、オレンジ味の激甘ジュースを一気飲みさせられたのだが、甘すぎてむせてしまい咳が止まらず、おまけに咳を我慢しようとするものだから、さんざん涙ぐんでしまった。隣の子供が”何この変なアジア人”、”でも、何飲んでんの?それ美味いの?”という興味半分、軽蔑半分的な視線を向けてくるが、そんなことに構ってはいられない。とにかくこれを飲まないことには、始まらないのだ。

ヒクヒクしながらも、やっと飲み干して時計を見るとなんともう12時。予定では家に帰っている時間だ。これから2時間、ずーっと猿岩石の本を読み続けなくてはならない。そうこうしている間にも幼児がひっきりなしに検査室に入っていき、断末魔の雄たけびのような、他人の子でも気の毒になってしまうような泣き声が聞こえてきてちっとも猿岩石に集中出来ない。

1時間ほど経った頃、いかにもブルジョア風で小奇麗な格好をしたジジババが、これまた高そうな服を着せた1歳くらいだろうか可愛い女の赤ちゃんを連れて慌てた様子でやってきた。熱が40度出ていて、小児科医に行ったのだが血液と尿の検査をしなくてはならないということで、幼児に強いというこのラボを紹介されてタクシーを飛ばしてきたというようなことを隣のオバちゃんに話していた。そんなのを盗み聞きしてるから、やっぱり猿岩石の本は全然進まない。というか内容が頭に入っていない。

そのうち、その赤ちゃんはギャーギャー泣きならがも採血は終わったらしいのだが、採尿が出来ず困っていた。ババが一生懸命哺乳瓶に入っている水を飲ませようとするのだが、赤い顔をしたこの子は飲もうともしないのだ。そのうち、銀縁のメガネをかけ、高そうなスーツを着てピカピカの靴を履いた赤ちゃんの父が慌てて駆けつけてきた。先ほどからの話を盗み聞きしていてわかったことは、ジジババからすると義理の息子であり、ジジババの娘である赤ちゃんの母は仕事がどうしても抜けられないようだ。どうにかしなくてはということで薬局に売っている果汁ジュースみたいなものを買ってきて飲ませてみて、1時間後にもう一度採尿しましょうということになったらしい。このデファンスの銀行にでも勤めていそうな身なりをした神経質そうな”義理の息子”は、慌てて薬局へと走り出したのだった。

そんな家族ドラマを見ていても、なかなか時間が経たない。猿岩石の話も全然集中出来ないし、帰りたいな~、腹減ったな~ということばかりを考え、時折、ラボに来る人々からの”この子、いつまでここにいるのかしら?”みたいな怪訝な視線を感じながらも何とか2時間頑張ったのだった。40度の熱を出した赤ちゃんは、その後やっと尿が出て、その結果もすぐにわかったらしく、ぞろぞろとまた慌しく帰っていき、いつまでも同じ椅子を温めているのは私一人になった。

やっと待望の2時になり採血をしてもらった。担当のおねえさんは、”気持ち悪くない?”と親切に聞いてくれるが、気持ち悪いなんてことより、腹が減って死にそうだった。”さっきからずっと昼飯何食べようかと考えてました”とつい言ってしまいそうになった。これで終わりかと思えば、また採尿もあった。でも確かに幼児であれば、大人と違ってトイレに入れば自然と尿意を催すなんてこともなく、大変だろうな~と思いながら、ラボを後にしたのだった。

|

« あ~、怖かった。 | トップページ | 定食。 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/512640/27849868

この記事へのトラックバック一覧です: ラボにて。:

« あ~、怖かった。 | トップページ | 定食。 »